
CD:RAM0501 RAMEE 国内盤 2,940円 ドイツ黎明期のチェンバロ音楽
〜J.ハスラー&H.L.ハスラー作品集
ふたりのハスラー チェンバロのための作品集/レオン・ベルベン(cmb・フッガー家所有の)
ヤーコプ・ハスラー(1569〜1621/22)
1. 第4旋法によるトッカータ
2. リチェルカール
3. 第1旋法によるリチェルカール
4. 第9旋法によるファンタジア
5. カンツォーン
6. 第7旋法によるフーガ
 ハンス・レオ・ハスラー(1564〜1612)
7. 「あるとき、私は散歩に出かけ」の旋律による31変奏
レオン・ベルベン(チェンバロ)使用楽器:フランチェスコ・パタヴィーノ 1561年製
MAKの俊英ベルベン、玄妙なるサウンドを連綿と響かせる!
16世紀当時にフッガー家が所有していたオリジナル楽器の瑞々しい美音で蘇るは、貴重きわまる黎明期のチェンバロ音楽!
たった1曲でベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲やドヴォルザークの第8交響曲と同じくらいの演奏時間になる後期ルネサンスのチェンバロ独奏曲をご存知だろうか――それは宗教改革の坩堝アウグスブルクで活躍した作曲家ハンス・レオ・ハスラーの「あるとき私は散歩に出かけ」による大変奏曲。「ルネサンスのハンマークラヴィーア・ソナタ」か「16世紀のハイドン変奏曲」か、といった堂々たる風情のこの異色作、かなり昔にMD+Gから手堅い演奏のものが1枚出ていたきり、活き活きとした新鮮さを感じさせる新録音など望むべくもなかったところ、ご覧のとおり気鋭レーベルRAMEEがすばらしい美麗アルバムのなかに収録してくれた! 収録曲目数からすれば一見、弟のヤーコプ・ハスラーの作品集のように見える本作、何しろ当該の変奏曲がたった1曲で40分以上にもわたる大作なため、実に総演奏時間の半分以上(!)がハンス・レオ・ハスラーの曲で占められているわけだ…鍵盤作品たった1曲で!
・・・閑話休題、改めて新譜の紹介を。ちょうど一年ほど前のRAMEE第1回リリース時にも“ミヒャエルではない”ヤーコプ・プレトリウスの素晴らしいオルガン作品集で古楽ファンを圧倒したベルベン(あのムジカ・アンティクヮ・ケルンの通奏低音を支える気鋭奏者だ)、今度はチェンバロに向かって、珍しいルネサンスのドイツ鍵盤作品を披露してくれる。英国でブルやギボンズらがヴァージナル作品を累々書いていた頃、ドイツで活躍していたヤーコプ・ハスラーのチェンバロ曲は、トッカータやリチェルカールなど最新のイタリア音楽の形式を取り入れつつも、ベルベンのゆったりと古雅な演奏テンポと相俟ってどこかオルガン作品のような趣もある――そう、彼は決して弾き急がず、隅々まで味わうかのようにじっくりと美音を響かせてゆくのに、微妙なアゴーギグが効いているのか、なぜか非常に瑞々しく新しい音楽感性が迸るのだ。飽きないどころか、いつまでも浸っていたくなる。
鋭く煌びやかなこの美音、実はRAMEE随一の自然録音と、何より使用楽器に秘訣がある。なんと16世紀の貴重なオリジナル、しかも“ドイツのメディチ家”豪商フッガー家が当時所有していたという銘器なのだ。状態は非常によく、古い調律ならではの不協和音のねじれた味わいも文脈性を感じさせ説得力豊か。オリジナル楽器やチェンバロ製作に興味ある方はもちろん、全古楽ファン必聴の充実盤なのである。 |