MIRARE9931歌詞 1.薔薇について 午(ひる)のさなかに、やつれながら 盛りの薔薇がしおれゆく その華やかさは夜明けとともに この世に生まれ開いたばかり その身にまとった清らかな夜露は いとどはなかく、その日のうちに 土に零れて、乾いてしまう なんと早く、花は盛るのだろう あたかも 下界の美とは、生まれながらに 枯れゆくさだめ、と知るかのようで 薔薇は花咲き、きょうこの日 全ての花の女王となって ほんのひととき、 はかない領土を広げるのである だが、その治世を、忠実な 鋭い棘が護っていようと それらは南風に枯れおちて、女王は その日が終わるのすら見られない。 なんと早く、花は盛るのだろう...(以下、繰り返し) 麗しい顔を世に輝かせて この日、彼女は考えたろう 王衣をまとい、冠を戴いて 牧場から貢ぎを受けるのだろうと はらはらと、花弁を散らしながら。 なんと早く、花は盛るのだろう...(以下、繰り返し) この日のうちに、身をやつれさせて 気高く伸びた茎は、南風のなか ごくひっそりと、しおれゆく 彼女をしなやかにとりまいていた 緑の枝の数々も 同じ四月のこの日のうちに ほどけて、去っていってしまう... なんと早く、花は盛るのだろう あたかも 下界の美とは、生まれながらに 枯れゆくさだめ、と知るかのよう。 3.おお、死すべき定めの者よ おお、死すべき定めの者よ、おまえは ひたすら勝利の方へと駆け寄って より素晴らしい栄光を欲するというのか? そんなことより、おまえ自身に勝利することを知りなさい。 おまえの前に反逆者たちの首班を 引き出し、奢り高ぶった 敵国を屈服させ、弓やその他の がらくたを、おまえの名のもとに葬った あのカンピドーリオという場所も、 いったい何のためになるというのか? もし、いま残虐な気持ちに 鼓動しているおまえの心臓が 脈動を止めて、二度と動かぬとすれば。 おお、死すべき定めの者よ...(以下、繰り返し) 誰もが恐れるは、偉大なアレクサンドロス 戦勝の数たるや短い生涯に似合わず 戦利品には、くまなく道の通った 棕櫚の香るアジアの地さえあった それなのに、彼は葡萄酒の酔いと 己が心の怒りにまかせて おのが友を血の海に沈めては 我に返って信じられぬ様子で 過ぎたあやまちを、いたずらに嘆くのだった。 おお、死すべき定めの者よ...(以下、繰り返し) いと勇敢なるサムソンは たとえどんなに気高い獅子が 現われようと、恐れもせずに ヘラクレスもかくやとばかり 力強いその2本の腕で むんずと捕まえ、引き裂いたものだ。 ペリシテ人を撲滅するのも みじめな驢馬の顎骨を片手にとって それだけの武装で事足りたという しかし、ひとたび情愛の炎が ヘラクレスのイオレーならぬダリラのおかげで 燃えさかるなら、不滅の心も 燃え尽きてしまう――隣人の胸で ふかく眠りこけ、身を押さえられて 突然の裏切りに眼をひらくこともできない。 おお、死すべき定めの者よ、おまえは ひたすら勝利の方へと駆け寄って より素晴らしい栄光を欲するというのか? そんなことより、おまえ自身に勝利することを知りなさい。 5.ごきげんよう、新しい四月よ ごきげんよう、新しい四月よ ピンダロスの手で竪琴はうたうよ 空に新たな夜明けが広がり 古い年を追いやるかのよう。 アンプリトスとデロスの牧人は 黄金(かね)に輝く美しい肌もあらわに 日が昇るにつれ、生命の躍動感と輝きが増すさまに ただもう、きょろきょろと空を見まわすばかりだ。 そう、西風が戻ってきたのよ 風はずっとおだやかになったよ。 ごきげんよう、新しい四月よ...(以下、繰り返し) 銀に輝く冬の雪も 今やすっかり溶けてしまい どんどんと、海のほうへと 渓流をくだって流れてゆくよ。 そしてさながらウェヌスに染められ 桃色に燃えたつかのように やさしく揺れる茂みの間に 一輪、太陽のような花も咲くよ。 ごきげんよう、新しい四月よ...(以下、繰り返し) プロクネ(夜啼鶯)もまた巣に戻っては 彼女をさいなんだテレウスを想って 手仕事のかたわら、嘆いて囀るよ。 フィロメラ(つばめ)も我々に教えてくれるよ 深く分け入れば分け入るほどに 森はどんどん美しくなる、と 突然の害意は、もうこわがらなくていいのだよ。 ごきげんよう、新しい四月よ...(以下、繰り返し) しかし、ローマが自惚れるのは 何も、この四月の輝きのためではないのだ。 この日、ファビオはペテロのマントをはおり この日、彼は三連冠でその髪を彩る。 ここに帰って来た、喜ばしく幸せな日は 神の栄光、下々の平安、信仰の栄誉にこそふさわしい。 ここに輝く星の光が いかなる嵐も静めてくれよう。 それは揺るがぬ魂と、聖なる樅の樹のかたちをとった、 いかにも頼れる港なのだ。 おお、なんと安心なことか... 天(エトラ)の神がこの世につかわした どんな日よりも美しい今日、まさにこのために まっさらな石に刻み込もうではないか。 すべての言語、すべての竪琴で この日の到来を祝おうではないか。 不滅の力が、神の牧舎の牧人のもとへと戻ったのだ。 ごきげんよう、新しい四月よ ピンダロスの手で竪琴はうたうよ...! 7.草茂る野を統べる薔薇よ 薔薇よ、草茂る野の 領土を統べる薔薇の花よ、 曙とともに目覚めるという 五色ヒワが、恋愛を称えて 囀り鳴くのを耳にして、 おまえは露を滴らせ 葉を広げては、溜息をもらす それを耳にして、曙がいうには 無駄に溜息を費やしてはいかん、 おお、華やかな、無為に生きる花よ。 さあ、嘆くのはおよしなさい すると、さっきの五色ヒワが 一閃、薔薇のすぐそばを すばやく飛んでゆくのだった どこか別の土地を求めて、 おまえの切望さえ後ろに残して。 そう、きっとおまえの想い出さえも 風の一吹きで、飛び散ってしまうのだよ。 (歌詞日本語訳:白沢達生)