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アルファ・レーベル CD Alpha061 〜 Alpha070 (フランス)

CD:Alpha061航海する音楽家
  〜トバイアス・ヒューム船長の音楽世界

トバイアス・ヒューム(1575?〜1645)
「韻文にもとづく作品集 Poeticall Musicke」
〜リュートを伴ったヴァイオルにのせて
歌うための数編の歌曲、および他の
2本のヴァイオルによるコンソート音楽
1. 兵士の歌
2. 或る兵士のガリヤード
3. 偽りだ、私はその音符を変えるだろう
4. タバコとは愛のようなもの
5. ジョージ殿の喜び
6. 鉛のようなまどろみなど追い払え
7. 音楽の情熱
8. あまりにひどい悲しみよ
9. ヒューム船長の悲哀

「ヒューム船長の音楽世界
Captaine Humes Musicall Humors」
〜リラ・ヴァイオル1本だけで弾くための
10. ハーク、ハーク!
11. 落ちる!
12. ハンガリーの郷士ベックスの喜び
13. ヒューム船長のパヴァーヌ
14. 或る兵士の決意
15. 死
16. 生
17. 或るパヴァーヌ

ニマ・ベン・ダヴィド (低音ヴィオール)
+ブリュノ・ボテルフ(歌)、コンソート・ド・ラ・ベル・フイユ 他

おそろしき繊細さ、まったき雄弁闊達さ――
ニマ・ベン・ダヴィドの無伴奏は、あまりにも美しい奥深さ!
声楽曲も織り交ぜられた、Alphaならではのヒューム作品集
かのジョルディ・サヴァール御代によるヒュームの新録音登場が昨年の夏だったか――ASTREE NAIVEの旧譜と並んでみて改めて「世間にはヒュームのCDが少ない!」と思われたファンも少なくないだろうが、そこへ現れたAlphaの新譜はいきなり彼の両傑作に追い迫るほどの、きわめてレヴェルの高い内容だ。
“英国艦隊”華やかなりし頃の船乗りでもありヴィオールの達人でもあったイギリスの作曲家トバイアス・ヒュームは「ヒューム船長の音楽世界」と題された無伴奏作品集でヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)ファンにはおなじみ。フランス人らとは一線を画する、時にダウランドのような憂愁を、時にビーバーのような技巧性を垣間見せる音楽の素晴らしさもさりながら、何しろ無伴奏ゆえ、また作品内容のシンプルさゆえの困難さもあってか?あえて録音に踏み切る奏者が少ないのが残念なところ――だが、あえて録音にも乗り出した人の演奏には(サヴァールやパンドルフォを含め)傑作が少なくない...ということも、本盤の素晴らしさに触れていると思い起こされてくるのでは。
ここでヴィオールを縦横無尽に操ってみせているのは、Alphaではすでに“悪魔のようにヴィオールを奏する”と謳われたアントワヌ・フォルクレーらの作品を収めたアルバム(Alpha007)でその音楽性とテクニックを如何なく見せつけた、フランスを中心に活躍するユダヤ系ヴィオール奏者ニマ・ベン・ダヴィド――縦横無尽の闊達な弓さばきとピツィカートの妙味、静謐さから暴虐までありとあらゆる表現をダイナミック豊かに描き出してみせ、これが無伴奏であることも忘れさせられる思い。アルバム前半には声楽も参加する「Poeticall Musicke」からの作品を収録し、後半でだんだん寂寥感がつのるようなプログラムになっているのも憎い演出だ。
同レーベルにおける一連の素晴らしい録音エンジニアリングの最重要人物であるユーグ・デショーが、彼女のサウンドを深く理解して見事に収めきっているのにも喝采を送りたい――声楽パートが参与する「韻文にもとづく作品集」では、活況を帯びてくる歌い手たちの心の揺らぎまで収まってしまっているのでは? と思えるほど、音楽に寄り添った“心ある”エンジニアリングといえるのではないだろうか。


CD:Alpha062 国内盤 2,940円 「ラ・スュルタン」〜F.クープランの室内楽とクラヴサンのための練習曲 フランソワ・クープラン(1668〜1733)

1.クラヴサンのための8つの練習曲 (指南書「クラヴサン奏法」に掲載)
2.コンセール「ラ・スュルタン」 (1714年リヨン手稿譜版)
3.アルマンド ニ短調
4.「趣味の融合」  〜コンセール第14番
5.「趣味の融合」  〜コンセール第9番「愛人の肖像」

フランソワ・フェルナンデス(バロック・ヴァイオリン)
エリザベート・ジョワイエ(クラヴサン)
アルフレード・ベルナルディーニ(バロック・オーボエ)
エマニュエル・バルサ、ジェローム・アンタイ(低音ヴィオール) 他

リチェルカール・コンソートのフェルナンデスにバルサ、 ゼフィーロのベルナルディーニ、若き名手ジョワイエ... さらっと“名手だけを集めた”豪華メンバーのクープラン

レオンハルトやG.ロランスの場合のように、ときおり本当に“さらっと”大物アーティストを起用してみせるからAlphaレーベルは侮れない。

クラヴサン曲と編成さまざまなコンセール(室内楽)で編まれた種々雑多なこのクープラン作品集もそうだ。すでに同レーベルで「バッハ:インヴェンションとシンフォニア」(Alpha034)によってクリーンヒットをみせたエリザベート・ジョワイエ(※手違いで商品表記が“ジョイエ”となっていましたが...)がアルバムの主役として繊細緻密で雄弁な音作りを聞かせているそば、ヴァイオリンを弾いているのはなんと、コープマンやクイケン兄弟との共演で名を馳せるかたわらリチェルカール・コンソートの主要メンバーとしても活躍、日本でも大いに名をはせているあのフランソワ・フェルナンデスなのである!その繊細な演奏は、今回同時にご案内しているMIRARE-Ambroisieでのヴィヴァルディ(MIR9968)におけるヴィオラ・ダモーレの快演とあわせて聴けば感慨いや増すこと請け合い。

さらによく見れば、ASTREEやVirgin-Veritasなどフランス系レーベルではよくお目にかかるジェローム・アンタイやら、それこそフランス小規模古楽の名盤には軒並みクレジットされている俊英エマニュエル・バルサなどの名も。そのうえオーボエには1月下旬に来日するアンサンブル・ゼフィーロの主宰者のひとりである名手ベルナルディーニまで登場し、絢爛豪華なクレジットにさらなる華を添えている。

肝心の曲目について...ここでの目玉はこのような豪華陣によるコンセールでの名演なわけだが、実は併録されているクラヴサンのための八つのプレリュードも、初出が指南書の譜例ゆえ録音では見過ごされがち、という貴重な音源。最近ではブランディヌ・ラヌーのZig-Zag Territoiresでのクープラン作品集に収録されていたのが記憶に新しいが、これは2枚組なので入手しにくい...税込2,625円で豪華演奏陣でのコンセールの名演とともにこの曲が聴ける――いかにも得なCDというわけだ。


CDAlpha063 国内盤 2,940円 バラ・フォースタスは誰なのか? 〜フランシス・トレギアンの曲集より ナタリー・マレク(ソプラノ)ブリュノ・ボテルフ(テノール)他 アンサンブル“レ・ウィッチ”(古楽器使用)

バラ・フォースタスは誰なのか? 〜フランシス・トレギアンの曲集より

1.私の窓から去れ(作者不詳)
2.私が呼んだら来て(ダウランド)
3.我の窓から去れ(アリソン)
4.彼女は言い逃れができるだろうか/私に弁明を (ダウランド/ファン・エイク)
5.悲しみのパヴァーヌ、トレギアン (フィリップス)
6.悲しみのガリアード(フィリップス)
7.沈黙の夜から(ダウランド)
8.鳩小屋のパヴァーヌ (フェラボスコ2世)
9.四音のパヴァーヌ「聞きたまえ、おお神よ」(フェラボスコ2世)
10.トレギアンのグラウンド(バード)
11.暗闇に私は住みたい(コプラリオ)
12.ファンタジア(ウォード)
13.羊飼いの喜び〜 「バラ・フォースタスの夢」の旋律で(不詳)
14.おお、我が愛する恋人よ(モーリー)
15.パイパー船長のパヴァーヌ(ダウランド/モーリー)
16.ガリアード:彼女は言い逃れができるだろうか(ダウランド/モーリー)
17.もし私の嘆きが情熱をかきたてるなら(ダウランド)

ナタリー・マレク(ソプラノ)ブリュノ・ボテルフ(テノール)他
アンサンブル“レ・ウィッチ”(古楽器使用)

フランス古楽勢による英国エリザベス朝ものは、一味違う!
ダウランドやフィリップスが、こんなに艶っぽく響くとは――異種古楽器が悪戯ぽく絡みあい、色気漂う歌が興を添える。
以前はAlphaの“白いシリーズ”の方でプレイフォードの「ダンシング・マスター」を面白く聴かせてくれたフランスの異色古楽グループ「レ・ウィッチ」。遅まきながら日本リリースと相成ったこの最新盤では、同じく英国古楽の範疇ながら今度は16世紀エリザベス朝の重要曲集に焦点をあて、多方面で活躍するB.ボテルフのような歌い手をもメンバーに加えてエア(歌)やコンソートなど正統派エリザベス朝ものの本格的アンソロジーに仕上げている――と聞くと無数にある埋もれがちな(そして既に幾多の決定的名盤がある)英国古楽オムニバスめいた感じだが、そう簡単に侮れないポイントは前作同様、彼女ら“魔女たち”がフランスのアーティストである・という点。英国系のアンサンブルなら、きれいに粒の揃ったサウンドとネイティヴ英国英語の玄妙さを武器に例の独特な本格派っぽさを醸し出してくるところ、レ・ウィッチと共演者(原文解説ではGuest Witches(客演魔女たち)とある)は、ラテン系古楽奏者ならではの柔軟な歌いまわし、個性さまざまで否応なしに色気ただようサウンドを複雑にからませて、何やら聴いたこともないような“面白すぎる英国古楽”に仕立て上げてしまうのだ。たいていはホール・コンソート(弦楽四重奏的に同属楽器で構成された合奏)で整然と聴かせるような曲を、ここではわざとらしいまでにほぼ徹頭徹尾ブロークン・コンソート(リコーダー、ヴァイオリン、オルガン…と異種楽器を集めての合奏)で弾き、いわば白黒写真に彩色してしまうウォーホルのポスターのような異色のフュージョン的魅力を振りまいている――Alpha随一の技師H.デショーによる、空気感があるのに不思議と各楽器の音がきわだつ超絶エンジニアリングが彼らの意図をこれまた完璧に伝えてくれるから嬉しい。
名歌手ボテルフのエモーショナルな英語歌唱、エシェルベルジェが弾くクラヴィオルガンの素朴なパイプ音と鋭角的なタッチ、甘美にたわむヴァイオリンにふくよかな笛の音…聴き所が多すぎる面白さゆえに、フランスでは難関のクロース賞をはじめ数々の賞を勝ち取ってしまったのだった。

a「このジグは誰のもの?
〜プレイフォード氏の舞踏指南」
Alpha502

a

仏シャルル・クロース音楽賞 受賞

a仏『DIAPASON』誌5ポイント受賞

a仏『Le Monde de la Musique』“CHOC(ショック)”受賞


CD:Alpha064 国内盤 2,940円 輝かしき月よ 〜黄金時代のスペインの音楽

1. 第10ファンタジア(ムダーラ)
2. イザベル(ムダーラ)
3. カライノスが馬駆けさす(バルデラーノ)
4. パバーナ第3番(ムダーラ)
5. あれ、山頂には(バルデラーノ)
6. レセルカーダ第4番「音階」(オルティス)
7. 結婚に失敗した美人(ナルバエス)
8. ロマンサ(パレロ)
9. モーロ人の王、馬にまたがり(ナルバエス)
10. 第6旋法によるティエント第23番(アラウホ)
11. 哀しきスペイン(エンシーナ)
12. 誰がために馬はいななく(カベソン)
13. 私を呼んでおくれ(ムダーラ)
14. ファンタジア第1番(ミラン)
15. レセルカーダ第5番(オルティス)
16. あな、輝かしき月よ(作者不詳)
17. パバーナ(カベソン)
18. 主は眠る(ムダーラ)
19. 第4旋法によるティエント(カベソン)
20. 灼けつけ、わが心(ナルバエス)
21. ファンタジア第8番(ミラン)
22. 何のために私は祈るのか(ナルバエス)
23. ファンタジア第11番(ミラン)
24. 澄んでさわやかな川の流れは(ムダーラ)
25. パバーナ第1番(ミラン)
26. パバーナ第4番(ミラン)
27. ビリャンシーコ「牛ども」(ムダーラ&ナルバエス)
28. なべて世間、人の世は(アラウホ)

ギユメット・ロランス(メゾ=ソプラノ)
ダミアン・コロン(オルガン)
フランソワーズ・ジョアネル(ダブルハープ)
マイク・フェントロス(ヴィウエラ、バロックギター)
フランシス・ラッシュ(打楽器)

ギユメット・ロランス、久々にAlphaレーベル登場! まったく衰えをみせない絶唱――器楽陣も細やかで豊穣

Alpha最初期にル・ポエム・アルモニークに客演、どちらも最近カタログ付きで再発された「カスタルディ、奔放な音楽家の肖像」(現Alpha900)や「ドメーニコ・ベッリとフィレンツェの“新様式”」(現Alpha903:オーダーシートの「お知らせ」参照)で今なお衰えぬ声と迫真の音楽性を印象づけたギユメット・ロランスが、久しぶりにAlphaでCDを制作した。今度は完全に彼女のソロ・アルバムといってよいスタイルで、伴奏は大オルガン、古いダブル・ハープ、ヴィウエラ、バロックギター...とさまざま。

これまでAlphaには「アルフォンソ10世『聖母マリアのカンティガ集』」(Alpha501)のほか正統派のスペインもの録音がなかったうえ、単体でロランスのような大歌手がアルバムを制作するということも異色。それはともかく、作品の多様さには目をみはるものがある――ビウエラ伴奏の歌曲あり、オルガン伴奏の声楽曲あり、カベソンやアラウホのオルガン曲あり、ナルバエスやミランのビウエラ曲あり、はたまたダブルハープによる演奏あり...オルガンを弾いているダミアン・コロンやビウエラを弾いているマイク・フェントロスらのテクニック・音楽性もあざやかで、飽きさせないつくりになっている。昔からスペイン系の古楽奏者・歌手には名手が少なくなく(代表格がサヴァールとモンセラ・フィゲーラス、若手ではカルロス・メーナあたりか)、スペイン黄金時代ものには敵なしの“本場もの”ディスクも少ない中、フランス仕込みで演劇のセンス抜群・静謐な歌い口と迫真の歌いまわしを自在に使いこなすことで知られるロランスらの“フランス的に昇華されたスペイン音楽”は独特の光彩を放つアイテムであるともいえる。

一度聴いたらやみつきになること間違いなしの1作、やはりAlpha...とうならずにはいられない銘品だ。


CD:Alpha065 国内盤2枚組 カヴァリエーリ:魂と肉体の劇(全曲)

エミリオ・デ・カヴァリエーリ (1550頃〜1602) オラトリオ 「魂と肉体の劇」 (全3幕)

クリスティーナ・プルハル指揮 ラルペッジャータ マルコ・ビズリー(T)ヨハンネット・ゾーメル(S)
ドミニク・ヴィス(カウンターテナー)他

圧倒的な説得力と表現力で聴かせる“最古のオラトリオ” 超絶技巧の名手楽団と絶妙のからみを見せるのは鬼才ビズリー、そしてドミニク・ヴィス...!

古くはE・レーラーの録音(NUOVA ERA)やマッケラスがカペラ・アカデミカ・ウィーンを指揮したARCHIVの録音(テオ・アダムやトロヤヌスら大歌手勢がK・エクヴィルツやエスウッドら古楽のプロと共演していた...)、最近ではNAXOSのセルジォ・ヴァルトロ盤など比較的上質の録音にめぐまれてきた最古のオラトリオ「魂と肉体の劇」...だが、“比較的上質”などと生ぬるい言い草では収まらない、圧倒的な決定盤がここに登場した――ややこしい歌詞の面倒で長い音楽、と思っていたら、とんでもなかった! あっという間に2枚聴き終えてしまうエキサイティングな名演なのだ。Alpha渉外のロシニョール女史いわく「ヨーロッパではすでに何カ国でも大成功をおさめている」とのこと。

それもそのはず、Alphaの「タランテッラ」(Alpha503・AlphaSA503)で名をはせた英国人とナポリ人のハーフ・鬼才歌手マルコ・ビズリーが、独特の繊細かつエモーショナルな歌声で語り役をつとめているせいだ(発音もきれいで聴き取りやすい)。 「語りながら歌う」ということを追求していたカヴァリエーリの理想をまさに地でゆく彼の歌唱に、ついつい引き込まれてしまうのである。器楽合奏は名手プルハル指揮のラルペッジャータ――今回ご案内している「16人の即興演奏!」(Alpha512)で、メンバー一人一人がいかにスーパープレイヤーかは実証ずみの実力派団体である(Alphaにはカプスベルガー[Alpha011]や前述タランテッラなど録音多数)。冒頭のシャーウィンの悠々と美しいコルネットの吹き口、隠れた名手スクプリクの闊達なヴァイオリン、指揮者プルハルの繊細なハープ...シンフォニアやインテルメディオなど器楽曲も少なくなく、随所に聴き所があふれている。

しかし歌手陣の豪華さたるや遥かにすごい――Alphaではブクステフーデやシューベルトなどで名唱をきかせているオランダの音楽性豊かな名歌手ゾーメルの求心力ある歌もさることながら、注目は何といってもドミニク・ヴィスの参加! 彼がアンサンブルに参入したとたん場の空気が急に華やかになり、つい耳をそばだててしまうはず。

参加者ひとりひとりが驚くべき実力者ばかり、音楽性がぶつかりあい調和しあい至高の音楽絵巻が織りなされる。モンテヴェルディの大曲など好きな方には文句なしにおすすめできるし、バロック声楽のファンにも間違いなく訴求するであろう傑作ディスクだ。


CD:Alpha066 国内盤 2,940円 ルイ・クープラン:クラヴサンのための作品集

ルイ・クープラン(1626頃〜61)
1. クラヴサンのための組曲 ヘ長調
2. クラヴサンのための組曲 イ長調
3. 嬰へ短調のパヴァーヌ
4. クラヴサンのための組曲 ニ長調
5. クラヴサンのための組曲 イ長調
6. クラヴサンのための組曲 ヘ長調
7. クラヴサンのための組曲 ハ長調

演奏:スキップ・センペ (クラヴサン−17世紀フランスのモデルに基づく)

鬼才スキップ・センペ、Alpha初の独奏アルバムは聴く者の心を波立たせる“あやういルイ・クープラン”
 様々な編成・様々な楽器を用い、ルネサンスからバロックまで幅広いレパートリーにおいてヴィヴィッドな歴史的解釈を展開しているアンサンブル“カプリッチョ・ストラヴァガンテ”の主宰者スキップ・センペが、Alphaでは初めての完全独奏アルバムを制作した。 かつてDHMに残した名演の数々をご記憶の方も少なくないと思うが、この新たな録音も、聴けば聴くほど驚かずにはいられないユニークな演奏となっている。
 ほとんど幽玄の境地にあるレオンハルトの数々の名演、繊細なブランディーヌ・ヴェルレの全集といった名録音のせいか、ルイ・クープランには「優美」「玄妙」といったキーワードがしっくりくる印象があるが、ここでのセンペの演奏はそうした柔和なイメージを覆すような鮮烈な解釈だ。概してきびきびとしたリズムで淡々と進められてゆく音楽の時間進行とはうらはらに、鋭角的なアゴーギグや絶妙のルバートをこまやかに織り交ぜつつ、純正律で調律されたクラヴサンならではの不協和音のうねりを最大限に生かして、自由自在に、おそろしく豊かな“あやうい”音のタペストリーを織り上げてゆく。
 鬼才エンジニア、ユーグ・デショー&ノートルダム・ド・ボン・スクール病院礼拝堂というAlphaおなじみのサウンド・メイキングは今回も好調。センペの弾く直接音を中心に、絶妙な残響や楽器周囲の空気のゆらぎまで的確に拾い上げられている。


CD:Alpha067 国内盤 2,940円 ジャン=フィリップ・ラモーとフランス古典様式
〜ラモーのコンセールとフランス語カンタータ

1. ユベール・ル・ブランの著作 「ヴァイオリンの企みとチェロの野望に対するヴィオールの防衛」の朗読 ジャン=フィリップ・ラモー(1683〜1764)
2. トリオによる第5コンセール
3. 器楽伴奏付カンタータ「忠実なる牧人」
4. トリオによる第1コンセール
5. カンタータ「テティス」
6. トリオによる第3コンセール

レ・ミュジシャン・デュ・
ムッシュウ・クロッシュ(古楽器使用)
バンジャマン・ラザール(語り)

 酒井淳ら最若手たちが織りなす繊細な音楽に脱帽――
Alphaの面目躍如! 同レーベル初のラモー作品集
ラモーの「コンセールによるクラヴサン曲集」といえば、ルセ・寺神戸亮・上村かおりのトリオ(harmonia mundi france)らの名盤から近年ではピノック・ポッジャー・マンソン盤(Channel)やブランディヌ・ラヌーら若手古楽奏者らの逸作(ZigZag)など、名作だけに競合盤には事欠かない。だがZigZagの若手フランス古楽奏者らよりもさらに1世代若い(20代の奏者ばかり !)文字通りの最先鋭の若手たちが打ち立てた「Alphaのラモー」は、それらと張り合うにあまりあるヴィヴィッドな名演だ――楽器の取り合わせにも変化をもたせ、ラルペッジャータなどでも活躍している酒井淳のヴィオールや、トマ・プティの弾くバッス・ド・ヴィオロンの響きなども細やか。またM.ルートに師事したA.コセンコのトラヴェルソが見事。独特の侘を感じさせる師匠ゆずりのニュアンス豊かな妙音を奏で、ロココの繊細さを漂わせて美しい。
この録音のよいところは、他に2曲ものしっかりしたカンタータを収録しているところだろう――ラモーがオペラを手がける前、1720年代に書かれたイタリア様式の充実作で、意外と録音が少ないためAlphaならではの高水準な演奏で聴けるのは嬉しいかぎりだ。さらにもうひとつ特筆すべきことに、冒頭ではRICERCARレーベルのフェルナンデス(vn)=ツィパリング(vc)=ピエルロ(vg)3人組による不朽のフランス・バロック室内楽曲集のタイトルにも使われたユベール・ル・ブランの名著「ヴィオールの防衛」が、全文テクスト付きで朗読されているのである(担当は当時の発音にも明るいB.ラザール)。
誰にも親しみやすいラモーの三重奏コンセールだが、なにぶん奥深い和声学の大家ラモーの作品。その奥深さの側面をどこまでも解き明かしてくれる、充実したアルバムに仕上がっている――ビギナーから専門家まで深く楽しめる名盤の登場なのである。 ( 2005年9月16日発売予定)


CD:Alpha068 国内盤 2,940円 陵辱された女神たち〜フランス・バロックのカンタータ集

フィリップ・クルボワ(1705〜30)
ニコラ・クレランボー(1697〜1764)
フランソワ・コラン・ド・
ブラモン(1690〜1760)

1. クルボワ: カンタータ 「アリアーヌ」(1710)
2. クレランボー:カンタータ 「レアンドルとエロー」(1713)
3. コラン・ド・ブラモン:カンタータ「シルセー」(1723)
4. クレランボー:カンタータ 「メデー」(1710)

アニェス・メロン(ソプラノ)
アンサンブル・バルカロール(古楽器使用)
アリス・ピエロ(vn)/ケネス・ワイス(cmb)/ リチャード・ブースビー(vg) 他

アニェス・メロン健在! 切々とした表現力の深さは圧巻!
ワイスやブースビーら“意外な顔合わせ”による
名手たちのサポートも絶妙、ひたすら充実のフランス作品集
先だってのクープラン作品集(Alpha062)もフランソワ・フェルナンデスをはじめ錚々たるアーティストが結集していて驚かされたが、このフランス語カンタータ集もまた演奏陣の豪華さ、そして意外な顔合わせに驚かされる1作だ――主役どころはなんと、ヘレヴェッヘがharmonia mundi franceで制作してきた数々のアルバムで主役格を歌ってきたアニェス・メロン(S)! 久方ぶりに彼女の名をみたと驚く暇も与えず、切々とした彼女随一の清廉な歌声がよりいっそう多様なニュアンスをはらみ、表現力が深まっているのに気がつくのでは? 今回のアルバムのテーマは、男たちと一時は深い愛をはぐくみながらも無残に捨てられた神話上の女性たち。狂おしい寂寥感から荒れ狂う怒りの心、決然とした諦念や涙をさそう死への思いなど、彼女の表現力の豊かさが試されるフレーズに満ち満ちているところ、アニェス・メロンは堂々、こちらの期待を鮮やかに上回りつつ、至上の詩的・音楽的空間を演出してゆく。
そして伴奏陣の面々がまた錚々たるもの――チェンバロはW.クリスティのアシスタントを長くつとめ、SATIRINO=AMBROISIEでのバッハ(パルティータ/SR011)やラモー(オペラのクラヴサン編曲/SR031)の録音で大いに実力を見せつけてくれたケネス・ワイス。ヴァイオリンにはAlphaきっての傑作「ビーバー:ロザリオのソナタ集」で一躍知名度をあげたアリス・ピエロ――彼ら二人の闊達かつ自発的な音楽作りのもと、確固としたテンポを支えつつ絶妙のタイミングで雄弁に前へ出てくるヴィオラ・ダ・ガンバ奏者は、なんとパーセル・クヮルテットの名手リチャード・ブースビー! 活躍してきたバックグラウンド(国)も異なる彼らが繰り広げる絶妙のアンサンブルが歌声と入り交じり、阿吽の呼吸のなかで静かに内容が深まってゆく――ヴェテランの名ソリストたちによる室内楽のような、そんな高次元の音作りをぜひご体験いただきたい。


CD:Alpha069 国内盤 2,940円 デュモン:王室礼拝堂のためのグラン・モテ

アンリ・デュモン(1610〜84)

1. オルガン独奏のためのアルマンド1
2. 詩編第136編「バビロンの流れのほとりで」
3. オルガン独奏のためのアルマンド2
4. 魂の対話
5. オルガン独奏のためのアルマンド3
6. 見よ、山上から来る人を
7. オルガン独奏のためのパヴァーヌ
8. 詩編第102編「わが魂よ、主を祝福せよ」
9. オルガン独奏のためのアルマンド・グラーヴ

フレデリク・デザンクロ(オルガン&指揮)
マルセル・ベークマン(C-T)ロバート・ゲチェル(T)他

デザンクロの好評シリーズ、再びデュモンに立ち返る。
重なり合う弦、洗練されたオルガンのタッチが
名唱に色を添える、あざやかなグラン・モテ集
Alphaレーベルへの録音第一作としてデュモンのプティ・モテ集を選んだデザンクロ&アンサンブル・ピエール・ロベールが、再びこのベルギー出身の大作曲家と向き合った。前作(Alpha021)で扱ったのが比較的簡素な伴奏によるインテンスな作品であったのに対し、今度は弦楽合奏が積極的に音楽に参与してくるグラン・モテの数々。古くはパイヤール(ERATO)、古楽器演奏ではヘレヴェッヘやリチェルカール・コンソートの録音などで愛聴されてきた傑作の数々ではあるが、ヴェルサイユ・バロック音楽センターなど“本場”フランス古楽界の最前線で活躍するベークマン(C-T)やゲチェル(T)ら忘れがたい声を持つ歌手ら気鋭の古楽アーティストたちを集めるアンサンブル・ピエール・ロベールの演奏は音作りの新鮮さ・瑞々しさにいおいて群を抜いた出来になっている(新鮮でいて奥深さを損なっていない点で、故アンリ・ルドロワとジェラール・レーヌらによるデュモン作品集(RICERCAR)の衝撃を思い出されるヘヴィ・ユーザーもおられることだろう)。新たな愛聴盤にして不足のない充実の仕上がりだ。
また今回の録音においても、オルガンの名手デザンクロがディエップ(北フランス)の教会の銘器を用いて自発性あふれる独奏を何曲か披露してくれている。もちろん録音のクオリティは保障つき――2004年後期以来ひそかなベストセラーとなりつつあるレヒシュタイナーのリスト・オルガン作品集(Alpha059)の衝撃が忘れられないオーディオファイルにも、当然ながら古い鍵盤楽器の新しい名演をお探しの古楽ファンにも、ぜひ注目していただきたいところである(いつの日か、Alphaでデザンクロのソロ・アルバムが出てくれれば...と夢見るのは担当者だけではないはず)。


CD:Alpha070 パリのイタリア人〜ドニゼッティ:フランス語とイタリア語によるサロン歌曲・二重唱曲集

ガエータノ・ドニゼッティ (1797〜1848)

1. さらば (I)
2. おお、残酷な人
3. 遠く離れて
4. これ以上、何がお望み?
5. それは春のこと(フランス語)
6. ゴンドリエラ
7. アドリア海のゴンドラ漕ぎ(フランス語)
8. ラ・スュルターヌ(フランス語)
9. さらば (II) (フランス語)
10. 新たなるウリカ(フランス語)
11. 宿命
12. 幻影(フランス語)
13. 愛しているかと訊くのかい
14. 六つのイタリア語二重唱
誓い 〜 夜明け 〜 ビーチェの
息吹き 〜 愛、それは天の声 〜
眼差しひとすじ、声ひとすじ 〜
飲んだくれども

録音:2004年5月, ショー・ド・フォン(スイス)
録音・編集:ユーグ・デショー
監修:ダミアン・コラ

アンサンブル“レ・ドモワゼル・ド...”
ゾフィー・マラン=ドゴール(ソプラノ)
クレール・ブリュア(メゾソプラノ)
セルジュ・シフェルステン(ピアノ、スタンウェイ)

あくまでエレガント、あくまで瑞々しく――“本物”のシックさを身につけたフランスの歌曲ユニットが優雅でお洒落な持ち味そのまま、ベルカント時代の社交人の世界を描く
Alphaの黒ジャケ・レギュラーシリーズでは数少ない現代楽器を堂々用いるアンサンブル「レ・ドモワゼル・ド…」は、まるで巨匠監督のフランス映画のような、お洒落で優美かつ筋の通った芸術性ある解釈が美しい歌曲ユニット。前作「うるわしのヴァカンス」(Alpha033)での高雅さにみちた絶妙のセンスそのままに、今度はドニゼッティの歌曲集を世に問うた。OPERA RARAレーベルや日本ドニゼッティ協会の尽力の賜物か、今やドニゼッティの伊・仏語歌曲は珍しさの域を脱したとは思うが、このアルバムは居並ぶ既発売盤を悠々と凌駕するのでは――というか、作品の持ち味の忠実な再現以上の(あるいは、それとは別の)社交界の軽妙なる余興としてのエスプリめいたものが隅々まで満ち溢れたユニークな境地を体現しているといえる。
何はともあれ、ベル・カント・オペラの巨匠ドニゼッティが後年パリでも大いに活躍したことは有名。「連隊の娘」をはじめフランス語版がオリジナルのオペラの数々もさることながら、ロッシーニ以上の多忙な活動のさなかに書き連ねられたサロン歌曲の数々も、芯の通った歌曲風のものあり、ややオペラ・アリア風のものあり、小唄風のものあり…と多種多様かつ高水準で、じつに面白い。ここではフランス語とイタリア語の作品を織り交ぜつつ、19世紀当時の社交人たちの関心事(恋のあれこれはいわずもがな、ヴェネツィア風俗、モロッコや北アフリカへの憧憬、自然への愛着...)を垣間見せる千変万化の名作群を19曲たっぷり楽しめる。とりわけ素晴らしいのは二重唱! クリスティやヘレヴェッヘら古楽指揮者たちとの共演も多い名歌手ふたりの息はぴったり、時にさざめき笑いまで織り交ぜて、あでやかなムードで表現力豊かに歌詞のおもしろみを際立たせてくれる――そこへ磨きぬかれたスタンウェイの美音がからみつく、華麗にして優美、猥雑にして高雅なサロンのエスプリが弾けるような快さ!
録音スタッフにはAlpha最高のエンジニアであるユーグ・デショーが起用され、会場の繊細な空気のゆれ、アーティストたちの高揚感まで神業的なエンジニアリングで収録。ピアノの響きはどこまでも瑞々しく、歌声のふれあい/ずれあいはどこまでもこまやかに、すぐそこで歌っているかのような自然さで迫ってくるのがまた素晴らしい。