[1]〜[20] カンタータ=ディヴェルティスマン「アポロン、または太陽の神」
1−序曲
2−アポロン(エール)
穏やかな夜よ、おまえの旅はもうおしまいか?
この美しい場所にあって、おまえの静けさは煩わしいばかり。
芸術と快楽の軍勢が、わしを導く
奴らを揺り覚ますのも、このわしだがな。
(レチタティフ)
この道程もやっと終わり
この戦車も、海の深き淵へと下りゆくときだ
わしは知った、ここにも無数の目が開いておると
まったく! こんなに早くから、光を与えてやらねばならぬとは!
(エール)
穏やかな夜よ、おまえの旅はもうおしまいか?
この美しい場所にあって、おまえの静けさは煩わしいばかり。
3−“夜”(レシタティフ)
神々がわたしに与えた時間を、どうか奪わないでください
わたしはまだ、去るわけにはいかないのです
どうか、あなたさまの取り分を満たされるよう
昼の神よ、お願いです、暁の女神のお告げをお待ちください。
(エール)
明るさとともに、悩みの種もあれこれ訪う
夜は、悩みを閉(つな)いでおくのに。
明るさとともに、喜びは減じる
夜は、喜びを逃さないのに。
わが帳(とばり)のもと、愛天使が飛びまわる
この影を好んで、日の目を逃れてきた者が。
4−アポロン(レシタティフ)
それでは、なにゆえ“眠り”を追いやったのだ?
あやつが翼をたたむのは見たぞ
逃げ去りつつも、裏切り者の手で
芥子をあつめて、潰しておったわ。
−“夜”(エール)
“眠り”はせいぜい、有象・無象の
死すべき者どもに、芥子を撒いていればよいのです
われらが聖域の女神には
安らぎなどは、要りませぬ。
−アポロン
“眠り”が、神々相手には力を持たぬとでも?
甘き眠りを取り戻すためには、神々とても骨を折ろうぞ。
あのイリオンが、ひどい危難にさらされていても
神々の眠りは、妨げられはしなかったのだぞ。
−“夜”
われらが女神は、人間の弱さなど気にかけませぬ、
かつては神々もまた、ひとしく弱さを持っていましたが。
女神の精神(こころ)は弛まず目覚めているのです、
同じ関心事のために、王たちもまた起きているでしょう、
ディアーネたるや、際限もなく森を駆けているでしょう。
(レシタティフ)
ここでは何でも摩訶不思議、彼女のしきたりに従って
夜さえもまた、けじめを忘れてしまうのです。
5−アポロン(荘重に)
彼女はミネルヴァの分身のように、わしの眼には映るわい
神の中でも、どの神よりも映えぬきの血であることよ。
その宮殿ではユピテルが、
雷槌(いかづち)をもて、突如、大地を脅かし
女神の盾が、この世にはびこる怪物どもの
無知で間違った性根をば、恐怖に落とし入れるのだ。
−アポロン・“夜”
声をそろえて、女神の栄誉を称えましょうぞ
彼女の業績、彼女の快楽を祝いましょうぞ
その娘たちも、絶えることなく
その悦楽を、心に刻んで忘れえぬでしょう。
6−エール(荘重に)
7−ムニュエ(=メヌエット)
8−ロンドー(優美に)
9−ムニュエ、繰り返し
10−アポロン(レシタティフ)
彼女の慰みとばかりに、舞台が出来るのを見に行こうかね?
エウリピデスが蘇るのを、ひとつ聴くとしようかね?
彼女に入れ知恵したものは、プラウトゥスか、テレンシウスか?
愛天使もあわてて、彼女にならって
溜息のつきかたを真似たがるのだな?
(エール)
飛べ、愛天使よ、母のもとより飛びたつがいい
この宮廷は、シテール島にも劣りはせんぞ、
同じくらいに、甘美な休暇となるだろうて。
おまえの母とて、欠かさずここへやって来るのだ、
彼女の眼(まなこ)に、嫉妬の心が
火をつけてさえいなければ、だが。
11−“夜”(レシタティフ)
舞台はすぐに整いましょう――けれども、新たな祝宴が
祝いの神に捧げられるべきです。
−アポロン
この夜の旅には、おまえの運命を左右する
女神のために、ひとつ、捧げ物が必要だろうて。
−“夜”
その神託は、死せる者たちの耳に届けるべきでしょう
われらの願いが容れられるように、せめてもの返礼のために。
−アポロン
それではそいつを聞くとしよう、抗いようもないのだから
もう少ししたら、わしは朝日を輝かせようぞ――
だが、この音は何だ?
コモスが、ここへやって来たのでは?
12−行進曲
13−コモス(レシタティフ)
どうか、コモスを一瞥くださるがいい、ここなる場所をすべる女神よ!
わしは、みんなに愛されておる神なのじゃ、
アポロンさまも、あんたのおそばにおるようですな
何でもきちんと見きわめなさる、趣味もおよろしいアポロンさまだ!
趣味の良さこそ、わしらの芸術に必要ではないかの?
しっかし女神よ、あんたの気取った雰囲気は
わしの妹の“豊穣”によく似とるわい。
森の奥にいるパンはわざわざ
手塩をかけて、これなる土産を持たせてくれた
空気の女神のユノーさまは、彼女の臣下の
千もの鳥を差し入れてくれた。
さあどうじゃ――ほれ、一大芝居のご認可をくだされ!
(エール)
われらが庭には花など咲かぬ
若き“暁”のふたつの眼に
涙を宿らす、そんな花なぞ。
あんたの眼には、ずっと強い力があるぞよ
魅力もたっぷり、栄誉もたっぷり
たった一瞥くれるだけで
神々にさえも不足でない、そんな宴に早変わり。
14−“夜”・アポロン・コモス(合唱)
声をそろえて、女神の栄誉を称えましょうぞ
彼女の業績、彼女の快楽を祝いましょうぞ
その娘たちも、絶えることなく
その悦楽を、心に刻んで忘れえぬでしょう。
15−サラバンド(荘重に)
16−リゴードン(嬉しげに)
17−第1パスピエ〜第2パスピエ
18−ミュゼット
19−ムニュエ・ド・ミュゼット
20−合唱、繰り返し
[21]-[31]
カンタータ=ディヴェルティスマン「オロール(“曙”の女神)」
21−序曲
22−眠りの場面〜メルクリウス(エール)
撒けよ振り撒け、眠りの神よ、魔法のかかった芥子つぶを
ムーサたちはいつだって、おまえの力を誉めそやしている
その返礼に、
あれらに安らぎを与えてやるのだ。
統べよ、ペガススを生んだかの山よりも
我らの心に染むこの丘を。
9人の姉妹に選ばれた、新しきこの一日に
メルクリウスは諸芸術を、眠りの神にあずけようぞ。
23−メルクリウス(エール、優しく)
眠れ、鳥たちよ、梢の蔭で
いとも甘美なその歌声をひそめて
明日には、われらが優美な歌に
その囀(さえず)りを合わすことだろう。
どうか静かに、愛すべきゼフュロス、
“夜”はフローラをあなたから隠した
明日には、生まれたばかりの“曙”が
あなたの心に火をつけるだろう。
やかましく喋るセーヌのむすめたち、
川の精たちよ、もう眠りなさい
明日には、おまえたちの女王を喜ばせようと
天まで噴きあげることになるだろう。
24−ムーサたちの合唱
撒けよ振り撒け、眠りの神よ、魔法のかかった芥子つぶを
ムーサたちはいつだって、おまえの力を誉めそやしている
その返礼に、
あれらに安らぎを与えてやるのだ。
25−プレリュード
26−メルクリウス(レシタティフ)
なんとまばゆく新たな光が、この地に生まれてくるのだろう!
誰がいったい、こんなに早く“曙”を連れてこれたのか?
−“曙”
この遠足をやめた覚えは、これっぽっちもありませぬ
これより素敵なものなんて、わたしは見たこともございませぬ。
ケファロスに抱かれた私めのことを、全世界が信じているかぎり
美徳は、いとおしきこの宮廷にわたしを留め置くでしょう。
夜のうちに、眠りのうちに、模糊たる怠惰の只中に
わたしは死すべき者たちすべてをば、うち見捨ててゆきましょう。
そして、警戒を怠らぬ機敏なわたしを
祭る信徒と祭壇が、彼女の宮殿におこるでしょう。
26−“曙”(エール)
ムーサたちよ、まだ眠っているのですか?
目覚めなさい――この声が聞こえるなら!
この“曙”が、絶えずおまえたちに
力を持っていることを忘れたのですか?
おまえたちの甘き音色よりも
聴きたく思うものなどないのです、
楽しく笑い、お戯れなさい
そうしたことこそ、あなたたちの修練になるのです。
27−第1のムーサ、第2のムーサ、メルクリウス
ああ!どうか“記憶”の娘たちを放っておいて下さい...
−“曙”(レシタティフ)
わたしが機敏であったがゆえに、おまえたちはこの地で遊べるのですよ。
−第1のムーサ、第2のムーサ
陽が高くなれば、わたしたちもその栄光を称えましょうぞ...
−“曙”
夜でも心を引き締めていなさい、彼女を喜ばせようというなら。
−メルクリウス
テティスの婚礼という荘厳なる集いで
精気さかんなヘルクレスは、エベと結ばれたもうた
その日は不死の方々に、歌がたくさん捧げられたものだが
栄光かがやくその日いらい、
天にはすっかり、沈黙ばかりが漂っているのだ。
−“曙”
ここなる女主人に、あなたがたの忠愛をうちあけなさい
彼女の美徳は、ムーサたちよ、おまえたちの心にも響くことでしょう。
−メルクリウス
どちらが楽かと問われるならば
お偉方は笑わすよりも、ただ誉める方が楽ですからな。
28−“曙”、メルクリウス(レシタティフ)
この命限りある覚えめでたき御方に
天が、いと優美なる栄誉を注ぎますように。
そしてどうかユピテルが、彼女に
我らも与(くみ)せる才覚をむすびますように。
29−第1のムーサ、第2のムーサ、“曙”、メルクリウス(合唱)
この命限りある覚えめでたき御方に
天が、いと優美なる栄誉を注ぎますように。
そしてどうかユピテルが、彼女に
我らも与(くみ)せる才覚をむすびますように。
30−第2のムーサ(エール)
あなたはあらたに生まれたばかりの輝きで
人間たちに、一日の始まりを知らせる
“曙”よ、あなたの再訪がわれらの期待に
みごと叶うことを祈ります。
この宮廷を、揺り起こすことはまかりなりませぬ
すてきな祝宴がある時を除いては。
31−サンフォニー
−大合唱
この命限りある覚えめでたき御方に
天が、いと優美なる栄誉を注ぎますように。
そしてどうかユピテルが、彼女に
我らも与(くみ)せる才覚をむすびますように。
(歌詞翻訳:白沢達生)