![]() 訳詞:白沢達生 |
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1. Par une belle nuit それはきれいな夜だから(詩:A.ド・セギュール伯爵/曲:グノー) いちめんの花が野原で眠り、 夜はきらびやか――姉さん、ごらんなさいよ 夕暮れと、夢見心地を 一度に楽しむことにしましょう ほら、月は神秘に包まれて 空高く、夜闇に映えているわ 大きな樅の上に輝く月を わたしたちはうっとり眺めている なんて世界は静かなのでしょう 森も、野原も、そして空まで、しんと静か まるで時間が流れを止めて 無限のさなかに留まるかのよう 時間は、夜の美しさに見惚れて 絶えずはばたく大きな翼を ひととき休め、折りたたんで 深い瞑想にふけりゆく 人は去りゆき、風が吹いて 彼の足跡をそっと消し去る 眺める者たちは次々と変われど 夜は、つねに変わることがない されど、おのれの馬車を駆って 漆黒の眠りの夜は過ぎゆくよ 姉さん、ふたりで希望を胸に ひととき、夜明けを待ちましょう 2. Fleur des bois 野の花よ、森の花よ(詩:Ch.リニー/曲:グノー) 野に咲く花よ、森の花よ あなたたちったらいつも楽しそう そしてわたしたちの郷の花たちは それぞれに想う人がいる ええ、あなたたちの目はとてもかわいいわ スズラン、リラ、それにスミレも けれど、わたしたちがいつも歌うのは 春のはじめに咲くあの花のこと そう――それは、ひなぎくの花。 みんな、ひなぎくが大好きなのよ。 野ばらは煽情的だけれど あの棘がちょっと困りもの 薔薇は確かに美の女王だけど お高く止まりすぎではなくて? キンポウゲも確かにすてき やたら色気をふりまいてるけど それでも、垣根にそっと咲いてる 金の星ほどの魅力はないわ 愛らしい恋人たちはいつでも 貞淑な愛を言い交わすもの、 彼らの髪を飾るためには すてきな花冠を編んであげるべき かわいい頭に、こうしてちょこんと あなたが戴せてあげた飾りも 次の朝には、もう換えなくては。 花の女神は、朝が来るごとに 新たにきちんと身づくろいをして 選りすぐった化粧をまとって みんなの前に現われる―― そう、それは白いひなぎく。 みんな、ひなぎくが大好きなのよ。 白いひなぎく、 シンプルなひなぎく、 つましいひなぎく――みんなが好きなの。 ![]() セレナーデ(詩:V.ユゴー/曲:グノー) あなたが歌を歌っていると 夕陽は、ぼくの腕の中で揺れる ぼくはそっと小声で答えた 想いは、あなたに聞こえたろうか あなたの甘美な歌声で、ぼくは 何より楽しかった日々を思い出す 歌っておくれ、わが美しき人、 歌っておくれ――そのままずっと! あなたがそっと微笑む時には その唇に、愛が広がる ただそれだけで、冷たい疑念など たちまちのうちに消え去ってしまう おお、なんという貞淑な笑み 屈託ない心のあらわれよ! 笑顔でいておくれ、わが美しき人 笑顔でいておくれ――そのままずっと! 眠るあなたは、静かで、清らか 木蔭で、ぼくは見守っている ときおり何やら物憂げに つぶやく寝言は、いかにも幸せ ゆったり伸ばした美しい体を 覆うものも、飾るものもない 眠りなさい、わが美しい人 眠りなさい――そのままずっと! ![]() ゆめみ心地(詩:V.ユゴー/曲:サン=サーンス) そこでは全ての魂が 誰かに何かを与えてくれる 音楽であったり、情熱であったり はたまた、芳しさであったり... そこでは全て、あらゆる場合に どんな時にも 薔薇や、その棘が関わってくるのだ それぞれの――恋の逢瀬に。 たとえば、空を飛ぶ鳥が休むべく 木の枝が伸びている、とか ニチニチソウの花を開かせるべく 夜明けが朝露をかけてやる、とか そういうふうに、何かが何かに 憩いを与えているわけだ そう――波が打ち寄せて 岸辺に口づけしているように。 そこでわたしも、おまえに与えよう こうしておまえに寄りかかりつつ そう、わたしの持ちえるうちで 最も素晴らしいものをあげよう、 そう――わが想いを受け取ってくれ かつて、この心はただ悲しく 朝露のように涙にかきくれ やっとおまえに辿りついた 数え切れぬ愛の誓約を 受け取りたまえ――わが愛人よ 日々の情熱と心の影とを どうか受けとめてくれたまえ! ただ一点の疑念もない 宙に舞うようなこの陶酔、 わたしの歌、この愛撫を わたしはおまえに捧げたい。 包むものもないわが魂は ごく頼りなげに海原を進む 指標となる星は、ただひとつ―― おまえの視線だけなのだ。 5. Pastorale 田園詩(詩:A.デトゥーシュ/曲:サン=サーンス) ここで可愛い鳥たちが ひそやかに愛を貪っているよ 野畑には、素朴な恋歌が こだまの中に 響いているよ。 芝生の上を流れる小川も ちょろちょろ、浮気に気もそぞろ そして楡の木にふと目をやれば ゆらゆら、小枝も身を曲げている ちいさな花に、キスしたいのさ。 6. printemps 春に(詩:J.バルビエ/曲:グノー) 春は、冬を追い立てて 緑なす木々のあいだで微笑む 新緑に色づく枝ぶりの下 羽音を響かせ、小鳥が飛んでゆく さあ、この蔭なす小径をゆこう 恋人たちがさまよい歩く 春がしきりに誘っているよ おいで――幸せな気分でいこう。 ほら、きらきらと陽射しはまたたく きれいに輝くこの陽光が きみの瞳にも反射して なお美しく、見えるようだ―― さあ、この蔭なす小径をゆこう 恋人たちがさまよい歩く 春がしきりに誘っているよ おいで――幸せな気分でいこう。 きみは歌う、その歌声は とこしえなる自然と協和音をなす まるで、天上の音楽のように 聞こえるような気さえするよ さあ、この蔭なす小径をゆこう 恋人たちがさまよい歩く 春がしきりに誘っているよ おいで――幸せな気分でいこう。 7. Sous le feuillage - La sieste 木蔭で午睡(詩:J.バルビエ/曲:グノー) 木立に、風が吹いて うたい、さざめく 木々は涼しい蔭をつくる そんな木蔭に横になろう ほの暖かい風は流れる ゆらゆら揺れて、落ち着きもせで ぼくはうっすら夢見心地に とおく砂浜のさざめきを聞く 風はやわらかく頬をなでて すこし酒でも飲んだみたいに うっとり、体の隅々にまで しずかに沁み入り、満ちてゆく 木々は涼しい蔭をつくり そんな木蔭がゆっくり広がる 夢見心地はぼくを慰め 苦難はどこかへ遠ざかってゆく…… 立ち昇った蜃気楼は 残像を残し、さらりと消える かなしい思い出の草々が まどろみの中で、たゆたっている 木立は、ただ風に吹かれて 低くうたい、さざめいている 木々は涼しい蔭をつくる―― そんな木蔭に、横たわろう。 8. Donne-moi cette fleur その花をぼくにくれないか(詩:L.ゴスラン/曲:グノー) その花を、いたんだその花をくれないか きみの腰と心の間で、ぐったりと 哀しげに、色も褪せている そう――蒼ざめてやつれた、その花がほしいのだ 永遠に人心まどわす薔薇であろうと 恥かしげに開きかかる百合であろうと くたりとしおれかかる、その花の 最後の溜息には、値せぬ。 魂をとろかす契りではないか! その女(ひと)は彼女の心の中に 何より甘美な花の香を宿していた 花の――彼女の、あまき香りよ...... その花は、道端で摘んだのだった あなたが踏みそうになったのを。 あなたは手をさしだして、言った そう――瑞々しくてかわいい、その花がほしいわ、と 小鳥が嘆息する、その木蔭で ぼくらは秘密を打ち明け合ったね、 あなたがうっとり、香りを嗅ぐとき 花は、あなたの顔を隠した 魂をとろかす契りではないか! その女(ひと)は彼女の心の中に 何より甘美な花の香を宿していた 花の――彼女の、あまき香りよ......! 9. Mignon ミニヨン(詩:L.ガレ/曲:グノー) 君は知っているだろうか――広い平野に たわわに実るオレンジが、黄金のごとく輝く国を 天恵あふれる青空の下に、けだるい風がそよと吹くたび 果樹園の香りの流れゆく――そんな国を? 昇る太陽はどこよりも輝かしい、 ねえ、どうだろう?そんな国、君は見たことがあるかい? 愛する人よ、ぼくがいつも夢見ているのは、 君と一緒に行きたいのは、そんな国なんだ。 君は知っているだろうか――真っ白い壁の家々は 垣根にミルテの花があり、蝶々たちが舞っている 輝く野原はそこかしこ、ひんやり冷たい露の珠が 畝のあいだの草の根元に、宝石のように潜んでいる... 昇る太陽はどこよりも輝かしい、 ねえ、どうだろう?そんな国、君は見たことがあるかい? 愛する人よ、ぼくがいつも夢見ているのは、 君と一緒に行きたいのは、そんな国なんだ。 10. Viens さあ、目に見えぬ笛よ(詩:V.ユゴー/曲:サン=サーンス) ほら、姿は見えないけれども 果樹園に、笛がしずかに歌う 吹いているのは、世にもおだやかな歌 牧人の歌に、他ならぬ。 枝葉の間を風はそよぎ 水面の鏡にさざ波を立てる 聞こえてくるのは、世にも愉しげな歌 鳥たちの歌に、他ならぬ。 どんな懸念も、あなたには無縁 愛し合おう、絶えず愛し合おう いま歌うべきは、世にも魅力的な歌 恋の歌に、他ならぬ。 11. Le Rossignol 夜啼きうぐいす(詩:T.バンヴィル/曲:サン=サーンス) 見て――そこの菫の花を 花弁の上に、夕陽がさして 露がしずかに輝いている、 ほら――森はすっかり暗くて その奥のほう、羽をそっと震わせ 鳴いているのは、夜啼き鶯。 どうかそのまま、肩を隠さず 窓辺にそうしていておくれ――さあ まだ覚えているかな、君が さっきぼくに言った言葉を そう、ついさっき――ああ、何て幸せな! 月は優しく光りかがやく 海は果てなく波打ち寄せる 海は果てなく波打ち寄せて うたいながら、ながく溜息をもらすかのよう ぼくのように――ぼくのように! ああ――でも静かに、ぼくはただ そうして坐ったあなたの膝や やさしく微笑むその唇や 黒い睫毛のきれいに揃った、あなたのその眼が好きなんだよ。 ついぞ、きのうのことだよね――どうか、 その髪をぼくにほどかせておくれ。 ああ――この髪、このコルセット、 こうしたまた手に抱けるなんて... そう、あなたは裏切らなかった 黄金色に輝く髪をゆらして ぼくの天使はまた来てくれた―― どうしよう、まるで夢のようだ! 12. D'n coeur qui t'aime あなたを愛する心もて(詩:J.ラシーヌ/曲:グノー) あなたを愛するこの心あれば 神よ、何ものにも平穏を乱されはしますまい! わが心はただ、あなたの気高き御心のみぞ求め けっして行方を見誤りはしない この地上にも、そして天にも あなたを愛する心にぞ訪(おと)う かかる安らぎに、勝るしあわせがありましょうか? 13. Puisqu'ici bas そこではすべての魂が(詩:V.ユゴー/曲:ラロ) そこでは全ての魂が 誰かに何かを与えてくれる 音楽であったり、情熱であったり はたまた、芳しさであったり... 数え切れぬ愛の誓約を 受け取りたまえ――わが愛人よ 日々の情熱と心の影とを どうか受けとめてくれたまえ! わたしは今こそ、おまえに捧げる こうしておまえに寄りかかりつつ そう、わたしの持ちえるうちで 最も素晴らしいものをあげよう、 包むものもないわが魂は ごく頼りなげに海原を進む 指標となる星は、ただひとつ おまえの視線だけなのだ。 そんな想いを、受け取っておくれ かつて、この心はただ悲しく 朝露のように涙にかきくれ やっとおまえに辿りついたのだ おまえはわたしを酔いしれさせる そこには一点の疑念もない わたしの歌という、この愛撫を どうか受けとめてくれたまえ! 14. Le Banc de pierre 石のベンチ(詩:TABLE.ド・シュダン/曲:グノー) 大きなポプラ並木の木蔭に、石のベンチが置かれてる ベンチの上には四季折々、ジャスミンやリラの花が積もっている そう――いつの日だったか、暮れなずむ夕方 彼女と僕は二人して、そこに座っていたものだ いつの夜も、僕らにはいとおしく、うつくしく 上を見上げれば金星が、夜明けまでずっと 白く明るい光を投げかけながら 輝かしく、天空にまたたいていたものだった 彼女の指先は震えていた なんて甘美なあのひととき、 恋の炎はちらちらまたたく ああ! 僕たちはなんて幸せだったろう――まるで 夜空がすべて、僕らのものに思えたものだった 彼女の声は、自然が織りなす音に溶け込んでいた かぐわしい風の音や、流れる小川のせせらぎや、 涼しい蔭を作ってくれる枝のこすれる優しい音とで 織りなされる朧ろな音楽に、わたしは魅了されたのだった 彼女のすばらしい笑みがこぼれれば わたしはさらに陶然となり 全き陶酔に我を忘れて まるで天上にいるかのような 金色の夢を、駆け抜けるような心地がしたものだった 今ではもう、何も残っていない――けだし、夢のような日々の印象は 一度は消え去ったとはいえ、こうしてわが心に甦ってくる ああ――失われた甘き夢、永遠に残る痛恨よ! 木々は、花は、せせらぎはあるのに――ただ彼女だけがいないのだ! 15. Les vacances うるわしのヴァカンス(詩:L.ビゴリ/曲:グノー) ヴァカンうるわしのヴァカンス(詩:L.ビゴリ/曲:グノー) ス、ヴァカンス――ヴァカンスばんざい! どんな懺悔も、罰課のたぐいも いまの欲望を止められやしないわ いざ、うるわしのヴァカンスへ 自由と快楽の野に出かけましょう! さっそく互いに駆けつけて ひとつ、一緒に出かけましょうよ 声ふるわせて歌う鳥たちの 音楽を聴きに行きましょうか、 その歌が途切れてしまう前に わたしたちはきっと、つい気もそぞろに ひょいと野原に手を伸ばしては 野苺や、花を摘みはじめちゃうわ けれど、そんな逃避行の前には きちんと躾をしようと思っている 愛する両親、おじさんおばさんのために 若々しく、真摯な誓いを立てておかなくちゃ 彼らが末々、平穏に過ごせますように 長生きして幸せに暮らせますように...と。 ![]() 数学は大事(詩:Ch.チュルパン/曲:グノー) 数を正しく数える技術 ここでは、それがすごーく大事 世の中、ちゃんと勉強しなかったせいで 数もまともに数えられない奴ばかり この有用な学問を学ぶのは すなわち、財産を守るということ というのも、友よ、この世の中では いろんな人と出会うものだし しばしば、たいそう計算高い人もいるから。 17. Aubade プロヴァンスの暁の恋歌(詩:V.ワイルダー/曲:ラロ) ブロンドの髪の、燃ゆる眼差しの美しきひと、 お願いだ、そっと教えてくれないか ほんの少しでも、ぼくの心を見かけなかったかい? なんだか、失くしてしまったようなのだ やれやれ!それで、ずっと探しまわっている まるでみすぼらしい野良犬のように そんなことを、あなたの腕の中で忘れさせてくれたらなあ! こうしている間にも、きっと そうさ、きっとあなたときたら ぼくが涙を流すのを見て さぞや笑っていることでしょう! そうして、あなたの謀反人を 牢に繋いでしまうのでしょう 残酷なひと、ぼくはあなたを疑いもせず 理性を失ってゆくというのに! ああ、どうか一声かけて、この燃え盛る熱を冷ましてください 柔らかいその唇から、ほんの小声で、一声でいい、 それだけで、ぼくを死の淵から引き上げることができるのだから...。 18. Dansons 踊りましょう(歌詞編・曲:ラロ) ラ、ラララ! 親しいみなさん踊りましょう、楽しまなくちゃいけません 快楽は逃げちゃうものなんですから 何も考えず、気兼ねもせずに わたしにとっての幸せとは――セクシーでいられるってことかしら つまり――あなたの両の目に、恋の火をつけてやることかしら? 毎日がパーティだったら!と思うわ、 いつだってスカした顔ができるもの。 今は、悩みも全て忘れましょう! 鬱々たる思いはほっといたって そのうち戻って来ちゃうんですから。 踊りましょうよ、薔薇の花を手に――そら! しかめ面のご忠言など、まっぴらごめんこうむりたいわ 理屈なんて体に悪いだけ、むしろ愛を謳いあげましょう 快楽に酔いしれ、歌いましょう――朝が来るまで、踊りましょうよ。 気分が浮き立ちはじめるような そんな喜びに、気もそぞろ 心がふるえて来ちゃうのよ...! さあ!こちらへ、わたしたちを楽しませて! さあ!こちらへ――心が恋へと開くのよ! 愛の神さま、微笑みかけてもよろしいかしら こっちにいらして、わたしの笑い声をお聞きになって。 古えの愛の預言を、わたしたちにも聞かせてくださらないかしら? 何て心が浮きたつんでしょう、 わたしの中で、何がそわそわしているんでしょう? 恋心ってやつかしら、ひょっとして? 今日のわたしは、こんなにきれいなんですものね! 19. Dans les cois bleus 青い色の片隅で(詩:Ch.A.サン=ブーヴ/曲:サン=サーンス) ところどころ黄金色に輝く、その青い片隅では (くわしく言うのはやめにしておこう、) この魂や、大事なものや、 甘き苦しみは、そっと隠しておくべきだ。 この世の中には、あらゆるものが溢れ返っているけれど 恥じ入る者など、まるでおらず 噂ばなしは、どんな音楽より 耳そばだてられ、盛り上がるもの、 そんなこの世に君臨するのは、悪意か はたまた愛の神なのか、 それとも、歌など聴かせても まるで無意味な耳なしか... ああ!もしまだそんなところが ちゃんとあって、逃げ場となるなら ところどころ黄金色に輝く、その青い片隅に 隠れてひっそり生きようではないか! さて――わたしはそんなところを、ちゃんとひとつ知っている いかにも青く清らかで、まさしく美こそが支配するところ 化粧など要らぬ、まるで青い百合の花 新雪のごとき純真さよ...! ああ、わたしは毎日でも 通いつめたい――愛しい人よ、 あなたの甘美な王国にあっては 魂をしっかり隠しておかねば 服従、それは絶えざる愛、 それは喜びか、もしくは苦難か 涙はとめどなく手の上に、あるいは小さく上下する その胸の上に、落ちかかる... 20. O ma belle rebelle おお、わが美しきあばずれ女(詩:A.ド・バイフ/曲:グノー) おお、わが美しきあばずれ女 おまえは何とわたしに冷たいのだ、 ちょっとした、その可愛げな笑みが わたしの心をくすぐる時、 あるいは、おまえの話し声の 愛くるしいその柔らかさが いとも気高く、優美なる ふたつの眼の、その眼差しが ちょっとした仕草が、わがこの心に触れる時、 輝かしい、天国のようなひとときに 愛は熱く燃え上がり この魂に、隈なくおまえが沁み入るのだ ああ……わが美しきあばずれ女よ! おまえは何とわたしに冷たい 灼けつくように燃えさかっている 想いが、ちりちり心を焦がす だからわたしはただひとつ 燃え尽きんとするこの心で望む ――ほんの少し、気休めばかりに おまえの口づけがほしいだけなのに おお、わが美しきあばずれ女 おまえは何と冷たいのだろう ほんの少し、口先ばかり触れて 慰めようともしてくれぬとは! この苦しみよ――ああ、いつの日か おまえの仕打ちに報いてやろうぞ! わが頼もしき愛の天使に いつかおまえは迎え入れられ やるせなさに身をよじるだろう 今のわたしが、おまえに恋して 切なく身悶えしているように。 そう、わが復讐が実を結ぶ時 おまえは思い知ることだろう、 恋人の口づけを拒むということが どれほどひどい仕打ちだったのかを...! 21. El Desdichado 不運な恋わずらい(詩:?/曲:サン=サーンス) ああ、おれの希望の樹に 花が咲くとて、何になろうか? それがただ徒らに 実を結ぶでなく、しおれゆくなら? 恋愛は栄光、と人はいうが おれに言わせりゃ、さながら地獄よ 恋をしている間じゅうは ひたすら苦しいだけだものな しあわせな奴と、不しあわせな奴とは それぞれ違った溜息をつくのさ 片や幸福に息をつまらせ 片や苦しみに顔をゆがめて...。 22. Clair de lune 月の光(C.マンデス/曲:サン=サーンス) 夢をみさせてくれる森、 そんな森を、夕暮れにさ迷う か細いあなたの面影が 僕の、あてどない歩みに付き添う 深まりゆく夜にゆれる霧は あなたの繊細なヴェールかしら? それとも、ただ樅の枝の間を 抜けて照らしている、月の光? そして、やさしく流れる音が 聞こえてくるのは、僕の涙? そうではなくて、僕の隣りに 寄り添ったあなたが泣いているの? 23. Le soir descend sur la colline 丘に、宵が帳を下ろし(詩:E.ルグヴェ/曲:サン=サーンス) 丘に、宵が帳を下ろし 遠く、山並はなお燃え残る 神聖な夜気が静かに広がり、 ほう、と黄金色に霞みゆく 薫りたつこの豊かな気分は 不思議な安らぎは、どこから来るのだろう 魔法にかけられたような、この夕暮れに どんな苦難も消え去るかのよう 澄みわたった湖の水面に そよ風がかすかな漣を寄せ 浮かんだ小舟はあてどなく進み 青い水面に、姿を映す―― 何とも甘美な夜気の囁きは やさしい水面の揺らぎは、どこから来るのだろう いかなる苦悩も長くは続かず 悪徳はことごとく忘れられるかのよう やがて吹き寄せる夜風に揺られて 湖の水面をさまよう小舟 全ての鎖を解かれた心に 欲望が募りゆくのは、なぜだろう あばら家を避け、宮殿を避けて ただ静謐な水面のうえを 小舟は進む――希望を乗せて 決して岸辺に寄せることなく 深い紺色の帳の下に 夜は、希望をまとっているのだ この満天の星空に、いつか 夜明けが広がりゆく時を夢見て... |